|
５月１９日、２０日に、ベイカーズフィールドで、全カリフォルニア州コミュニティカレッジ陸上競技チャンピオンシップが開催され、女子１万ｍに参加してきました。下表のとおり競技レベルは低いですが、もともと超“鈍”ランナーである私には、ステイトへの切符をつかむことも相当チャレンジングなことでした。
南北カ州から各６人（１００ｍ〜８００ｍの固定レーンレースは南北各４人＋全州上位１人）が出場できるこのステイト・チャンピオンシップ。今年は、スポーツ振興に力を注いでいるベイカーズフィールド市の記念スタジアム（収容人員２万人）が会場でした。その名の通りコミュニティカレッジは地域の学術＆スポーツ両面の振興基地ですから、４年制大学の規模に及ばずとも施設は驚くほど充実しています。試合で１０校近く行きましたが、どこも巨大な客席スタンド付の立派な競技場を完備（使用目的のメインはなんといってもアメリカンフットボールですが…）。とくにこのベイカーズフィールド・コミュニティカレッジのスタジアムはすり鉢状に客席で囲まれていて（風の強い土地柄か…）ゴージャスな雰囲気でした。しかも夕方からのナイター陸上で、さらに気分が盛り上がります。
女子１万ｍは一番最初の種目だったので、情けないタイムながら８位に入って１ポイント対校得点を稼いだ後は、リラックスして観戦を楽しむことができました。プログラムの資料を読んだりコーチに「コミュニティカレッジ陸上」の何たるかを聞きながら競技を見ていると、コミカレは競技レベルが低い！なんて言えないことがわかるし、陸上王国アメリカにおいては、これもアスリートにとって貴重な競技チャンスであることがわかります。
たとえば年齢的なものをみると、私の前を走っていたサクラメントの選手も３０代。アメリカのマスターズ陸上は４０歳から、という環境も影響しているのでしょうか。また、投擲種目の有名コーチがいるムーアパークカレッジには、４年制大学を卒業したアスリートたちが戻ってくるそうです。これを彼らは“逆トランスファー（編入）”と呼ぶらしく、“エリート”の域に及ばずとも、競技を続けたい選手たちの受け入れ先となっています。
そして、なぜ「競技レベルが低い」という前言を撤回しなければいけないかは、下の表で明らかでしょう。今年の大会のリザルトをみると、「低レベル」に違いありませんが、全米ジュニアカレッジ（米国のコミュニティカレッジの別称）記録は、まさに最高峰へのステップストーンといっていい数字が並びます。さらに、興味がエスカレートして探ってみると、その記録保持者の中にスゴイ名前を発見してしまいました。
男子５０００ｍは、アルジェリアのヌルディン・モルセリ、１９９６年アトランタ五輪１５００ｍ金メダリスト。８８年世界ジュニア選手権１５００ｍで銀メダルを獲得した彼は、アメリカ・カリフォルニア州のリバーサイド・コミュニティカレッジに入り、９０年４月に５０００ｍ１３分２５分２０の記録をつくります。１５００ｍのトップランナーとして台頭したのも、このころから。９１年東京世界陸上を制して、９２年バルセロナ、９６年アトランタ、２０００年シドニーとオリンピックは３大会に出場しています。そして、男子三段跳ＪＣ記録はジャマイカ人のジェームス・ベックフォードが保持。その１７ｍ９２という全米学生記録を上回る驚異的なレコードは９５年５月にテキサスでマークしたもの。同年世界選手権の走幅跳で銀メダル、翌96年の五輪でも同種目で銀メダルを獲得しています。まさに旬のトップアスリートが、コミュニティカレッジ大会に出場していた、ということ。ケタ違いのパフォーマンスに観衆が釘付けになった様子が目に浮かびます。残念ながら、今年のカリフォルニア州コミュニティカレッジチャンピオンシップには、それらしき逸材が見当たりませんでしたが、五輪前年の来年あたり……またそんな現象が起きたりするかもしれません。
2006年大会優勝記録と米国学生、ジュニアカレッジ、日本学生の記録の比較
|
|
カ州コミカレ
|
関東インカレ
|
関西インカレ
|
全米学生記録
|
全米ＪＣ記録
|
日本学生記録
|
|
男子100ｍ
|
10.46
|
10.37
|
10.45
|
9.92(9.98)*9.90(9.93)
|
10.09
|
10.05
|
|
200ｍ
|
20.76
|
20.35
|
21.22
|
19.86*19.85
|
20.08
|
20.26
|
|
400ｍ
|
47.19
|
46.11
|
46.91
|
44.00*43.50
|
44.52
|
45.03
|
|
800ｍ
|
1.52.31
|
1.48.46
|
1.52.60
|
1.44.55(1.44.70)*1.41.77(1.43.74)
|
1.46.60
|
1.46.18
|
|
1500ｍ
|
3.58.69
|
3.43.66
|
3.55.61
|
3.35.30(3.35.84)＊3.30.56（3.33.1）
|
3.39.33
|
3.38.4
|
|
5000ｍ
|
15.16.19
|
13.31.88
|
14.15.36
|
13.08.4(13.15.77)
|
13.25.20(13.59.20)
|
13.25.67（13.26.53）
|
|
10000ｍ
|
32.04.81
|
28.01.00
|
30.03.32
|
27.36.2(27.41.05)＊27.22.47
|
28.35.0(29.03.0)
|
27.31.29（27.48.55）
|
|
110ｍHＨ
|
14.49
|
14.03
|
14.27
|
13.00
|
13.49
|
13.5
|
|
400ｍIＨ
|
52.70
|
49.06
|
51.30
|
47.85＊47.10（47.45）
|
49.29
|
47.89
|
|
3000ｍＳＣ
|
9.32.10
|
8.47.68
|
9.06.03
|
8.05.4(8.19.27)
|
8.29.4(8.49.7)
|
8.25.8
|
|
4×100ｍＲ
|
40.04
|
38.87
|
40.01
|
38.04
|
38.86
|
38.57
|
|
4×400ｍＲ
|
3.12.47
|
|
3.09.23
|
2.59.91
|
3.01.89
|
3.03.71
|
|
走高跳
|
2.08
|
2.10
|
2.10
|
2.38＊2.39
|
2.34
|
2.32
|
|
棒高跳
|
5.10
|
5.20
|
5.16
|
5.98
|
5.49
|
5.52
|
|
走幅跳
|
7.43
|
7.83
|
7.62
|
8.74
|
8.20
|
8.25
|
|
三段跳
|
15.16
|
15.93
|
15.34
|
17.57＊17.71
|
17.92(17.07)
|
16.98
|
|
砲丸投
|
17.50
|
16.85
|
15.89
|
22.00
|
21.35
|
18.53
|
|
円盤投
|
50.46
|
54.20
|
44.04
|
66.91(66.58)
|
64.22(62.46)
|
56.35
|
|
ハンマー投
|
55.16
|
60.80
|
55.19
|
81.94(78.34)＊82.56
|
64.90(64.64)
|
67.5
|
|
やり投
|
62.20
|
72.18
|
70.31
|
89.10(83.30)
|
75.72
|
80.59
|
|
十種競技
|
6571
|
7129
|
6784
|
8463
|
7532
|
7916
|
|
女子100ｍ
|
11.75
|
11.80
|
11.61
|
10.78
|
11.12(11.23)
|
11.68
|
|
200ｍ
|
23.94
|
24.15
|
24.33
|
22.04
|
22.39(23.12)
|
23.74
|
|
400ｍ
|
56.48
|
55.28
|
56.08
|
50.18（50.60）＊49.91（49.95）
|
50.92(52.68)
|
53.56
|
|
800ｍ
|
2.15.65
|
2.07.17
|
2.13.57
|
1.59.11＊1.58.33
|
2.01.92(2.03.9)
|
2.02.10
|
|
1500ｍ
|
4.42.60
|
4.26.94
|
4.29.60
|
4.08.26＊4.05.81（4.05.88）
|
4.17.82
|
4.13.14
|
|
5000ｍ
|
18.17.70
|
16.26.46
|
16.04.43
|
15.23.03＊15.07.56
|
15.52.5
|
15.23.70
|
|
10000ｍ
|
38.13.8
|
34.11.63
|
33.48.34
|
32.22.97
|
35.20.88
|
31.47.82
|
|
100ｍＨ
|
14.18
|
13.66
|
13.76
|
12.61
|
13.13
|
13.41
|
|
400ｍＨ
|
62.27
|
59.35
|
61.53
|
54.54＊53.47
|
56.92(58.96)
|
57.71
|
|
3000ｍＳＣ
|
11.35.97
|
|
|
9.45.94＊9.43.36
|
|
|
|
4×100ｍＲ
|
47.18
|
45.69
|
46.05
|
42.50
|
43.83
|
45.44
|
|
4×400ｍＲ
|
3.52.56
|
3.41.87
|
3.47.84
|
3.26.46
|
3.30.66
|
3.39.84
|
|
走高跳
|
1.67
|
1.76
|
1.73
|
1.98＊2.00
|
1.83
|
1.93
|
|
棒高跳
|
3.68
|
3.90
|
4.01
|
4.53
|
4.37
|
4.01
|
|
走幅跳
|
6.10
|
6.09
|
5.97
|
6.99＊7.24
|
6.67(6.49)
|
6.58
|
|
三段跳
|
11.76
|
12.39
|
12.30
|
14.25（14.05）
|
14.10
|
13.69
|
|
砲丸投
|
13.76
|
14.66
|
13.51
|
18.99（18.85）
|
16.86(15.98)
|
17.39
|
|
円盤投
|
50.29
|
46.59
|
44.75
|
67.48（65.62）＊（65.90）
|
55.84(55.22)
|
51.86
|
|
ハンマー投
|
55.44
|
48.90
|
55.22
|
67.21
|
59.43(56.31)
|
55.66
|
|
やり投
|
44.11
|
56.22
|
50.39
|
60.26（59.64）＊（60.06）
|
51.64
|
56.57
|
|
七種競技
|
4499
|
5196
|
5317
|
6527（6390）＊6718
|
5687(5673)
|
5573
|
米国では“ジュニアカレッジ”は“コミュニティカレッジ”と同義で使われる
( )内は外国人が最高記録を持つ場合の国内選手の最高記録
全米学生記録はＮＣＡＡ公認のもの＊以下はＮＣＡＡが指定するシーズン外に出された記録
|
